
[増補]古典としての旧約聖書 月本昭男
筑摩書房 ちくま学芸文庫 2025年
2018年、NHKラジオ「宗教の時間」で、『物語としての旧約聖書』(上・下)が放送されました。講師は月本昭男氏。私は放送は聞かなかったのですが、書店でテキスト(上・下)を見かけて購入。旧約聖書物語を12回で概観する内容で、古代オリエント世界との関連の説明を大変興味深く読みました。このテキスト2冊は、現在1冊にまとめられて、『物語としての旧約聖書: 人類史に何をもたらしたのか』(月本昭男 NHKブックス)となっています。

今回読んだのは、同じ著者による『古典としての旧約聖書』(増補版)。計10本の講演がまとめられています。どのタイトルも興味関心を惹くものばかりで、私にとってはお得感がありました。
「古典としての旧約聖書」
「原初史の主題」
「旧約聖書の歴史記述と歴史観」
「人はひとりではない――旧約聖書にみる愛の倫理」
「旧約聖書に見る苦難の理解」
「歴史と信仰――預言者ホセアに学ぶ」
「主はわが牧者――ヤコブの生涯に学ぶ」
「旧約聖書と現代――一神教は暴力的か」
「古代文学に見る友情」
「旧約聖書における物語文学の構造と主題」
著者は、「古典としての旧約聖書」で、「旧約聖書はユダヤ教やキリスト教を超えて、すべての人の古典、人類の古典である」(p16)と、力を込めて語っています。
私たちキリスト教徒は、旧約聖書を新約聖書と共に正典として読んでいます。しかし、語弊のある言い方かもしれませんが、正典として読むだけではもったいない。「人間とは何か」「いかに生きるか」を問いかける、人類共通の古典としての魅力がそこにはあります。
信者でない一般のみなさんにとっても、聖書は「宗教の本」というイメージが強いかと思います。しかし、宗教の本として読むとか、神を信じる信じないとか、そういうことはいったん脇に置いて、人類共通の古典、優れた古典文学としての旧約聖書の魅力をぜひ知っていただきたいと思います。そこには、私たちと何ら変わらない「人間」が描かれています。
